インタビュー: 自動車オークション業界標準化とIT化についてお話いただきました

JBAインドネシアの紹介

JBAインドネシアは、2011年の会社設立以降、インドネシアにおける、自動車やバイクのオークション事業を幅広く展開している会社だ。2019年には、PT.Adi Sarana Armada Tbkと合併し、「JBA Bidwin Auction (JBA)」というブランド名で、インドネシア各地に17の支店をもち、さらに大規模にサービスを行っており、支店数・出店数において、インドネシアでNo.1の規模となっている。さらに、同年2019年には、「Carsome」と業務提携を発表するなど、インターネットビジネスへの展開と、IT技術の活用にも積極的。

このJBAインドネシアを、2011年よりけん引するのが、塩山和宏代表取締役だ。

 

吉次 (Y): 今日はお時間をいただきありがとうございます。

PT.LOGIQUE Digital Indonesiaで、御社のシステムからWebサイト、各種アプリの開発運用などを支援させていただいております。さまざまなプロジェクトを担当させていただく機会をいただき、本当にありがとうございます。御社のサポートさせていただくことで、当社の技術チームも成長してきたように思います。

難度の高いプロジェクトもありましたし、年々増加する出品台数・参加者に対応するべく運用のミッションクリティカル度が高いので、チャレンジングな場面もありますが、常に、貴重な仕事をさせていただいていると感じています。

 

JBAインドネシアは、インドネシアの「自動車・バイクオークション」という領域で、No.1のポジションにあるわけですが、御社のビジネスにとってのITの重要性について、どのようにお考えでしょうか?

 

塩山様 (S): お客様により利便性の高いサービスを届けるために、ITを最大限活用してきたことが、弊社の成長を可能にしてきた重要な要因の一つであったと考えています。

2011年当時、インドネシアのオークション業界は、他国で当たり前に行われるべきサービス内容やサービスレベルが実現されていませんでした。私は、こういった問題に対しては、ITを適切に活用することでそれらのレベルを格段に向上できると考え、御社と協働させていただき、必要なIT施策を取ってきました。結果、お客様に圧倒的に利便性の高いサービスを提供できるようになり、お客様にも評価いただいていると考えています。

たとえば、当初は、「事前にWebサイトで出品車両を詳細に確認できる」「非効率なマニュアル処理のため、お客様に長時間並んでいただく必要があった会場での手続きを変更する」など、当たり前のことから始めました。そういった小さい取り組み・工夫を積み重ね、お客様の情報格差をITで解消し、オークションに参加いただくハードルを下げ、多くのお客様に利便性を提供してきました。

弊社の取り組みを通して、お客様には高い利便性、他社との違いを感じていただけた結果、自然とJBAをお選びいただける流れとなったように思います。「Web上で出品車両を確認できる」などのシステムは、他社も数年で追随してきましたが、業界全体としてのサービスレベルを底上げすることになったので良かったと思っています。

もちろん、IT以外にもお客様の利便性向上のための取り組みは数多く行ってきましたが、とはいえ、その多くにITが関係しており、やはり「IT(DX化)」は重要であったと言えるでしょう。

 

 

Y: 競合他社はIT化のトップランナーでもある御社の動きを注視していると思います。良いサービスはすぐに模倣されてしまうのではと思いますが、これからも、ITを活用することでの他社との差別化、を推進していくことは可能だと思われますか?

 

S: JBAのサービスはまだ、他社より先行していると考えています。その状況でも、弊社は常に、他社が弊社のサービスレベルに達するよりも速いスピードで、更なるサービス改善を行ってもいます。

もちろん、細かい部分では、弊社もまだまだ改善するべきことはありますので、ブラッシュアップしていく速度を緩めることはありません。

常々取り組んでいるのは、バイヤーのお客様向けのサービスとその改善ですが、それだけではなく、セラーのお客様の利便性ももっと改善したいですね。『BASTKシステム』やPricing(検査からダメージ減額を算出しその車の価値を算出する)精度向上のための機能、オークション状況をリアルタイムに把握できる『Dashboard機能』など、今現在も、新規のサービスも既存サービスの改善機能もリリースをし続けています。

弊社はこれからも、他社がとても手を出せない、と思うような細部にまでこだわってお客様の利便性を追求していきたいと考えています。

今の時代、何をやるにしても、ITは切っても切り離せないものだと思います。新サービスをリリースするには、対応するシステムやデジタルマーケティングも調整しなくてはならないし、AIやFintechなど、ITの潮流に合わせた新サービスの開発も必要になるでしょう。今後も、「IT化/DX」を継続させ、より一層、JBAのサービスを磨いていく所存です。ファシリティーなどのハード面は他社にまねをされるかもしれませんが、サービスなど、ソフトな部分は模倣が難しいものです。表面上、いくら模倣したところで、コアなコンセプト部分を理解していないと全く別物になってしまいますからね。

 

Y: それだけのスピード感で、複数のプロジェクトを同時並行で行っているとプロジェクト管理も大変だと想像します。プロジェクトの予算化から計画策定、実行までどのような管理をされているのでしょうか?

 

S: JBAにとって、新サービス導入のためのシステム開発やデジタル投資は、メーカーにとっての新商品開発のようなものだと思っています。システム開発予算として考えると、全体のIT予算におけるリミットを意識せざるをえませんし、重要度も低く見積もられることもありますが、「新商品開発のための予算だ」と考えると、全く違った捉え方ができます。良い商品になると思えば、もともと計画したものでなくてもそこに一定の投資をして商品化しますし、その辺は、マーケット環境に合わせて、柔軟にスピーディーに考えるようにしています。

そういった柔軟性とスピード感は、特にインドネシアでは必要なものだと思いますね。最終決定は自分で行いますが、社員からの提案は常に受け付けています。普段の業務から感じた効率化のためのアイデアであったり、バイヤーやセラーのお客様からの声がヒントになったりするはずなので、積極的に、どんどん提案するようにと社員にも言っています。そうすると、多様な視点から興味深いアイデアが出てくるのですよね。自分はそういった貴重な意見を、過去の経験や現在のマーケット環境と照らして、優先順位をつけながら決断しています。

社内のプロジェクトマネージャーも育ってきてはいますが、特に注視しているのは、コアなコンセプト、つまり、「何のためにそのサービスを開発しているのか」という軸がぶれていないかという点です。プロジェクトマネージャーは、当然現場の声を聞く機会が多いので、どうしても現場のユーザー(社員)の利便性を高めたくなってしまう。しかしそれが、お客様の利便性を高めるという本来の目的とずれてしまったら本末転倒です。そういった視点が必要であることは、常日頃プロジェクトマネージャーにも伝えていますし、注意して管理しているポイントでもあります。

プロジェクトマネージャーのポジションや、社員の力(ポジション)の大きさでプロジェクトの優先順位が決まったりするのも、お客様重視とはかけ離れたロジックです。こういったことは、絶対に避けなくてはならないことだと思っています。

 

 

Y: 社員の皆さんからのインプットの他に、新サービスや新しい機能のアイデアを考えつくきっかけはありますか?

 

S: そうですね。常に他国の自動車オークション業界動向はウォッチしています。

日本は少し特殊ですが、やはり参考になる部分はありますし、タイやインド、中国なども興味深い取り組みが数多く見られるので、そういった情報収集は常にしています。

アメリカのトレンドももちろん、参考になりますね。

そこで見て調べたものは、すぐにサービスに取り入れることはなくても、自分のアイデアの金庫に蓄積しています。そうやって置いておいたアイデアのいくつかが、良いタイミングで繋がって1つの形になり、新サービスとしてお客様に提供することにつながると思いますね。

 

 

Y: 御社、JBA向けに開発し運用されている車両検査&評価システムと、BASTK(車両受渡し管理)システムについて、御社だけでなく、パートナーや競合他社でも活用することで業界標準化できれば、全てのプレイヤーにメリットがあるとお考えだと伺いました。

この点について、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか?

 

S: JBAは、お客様に車両の状態をきちんと知っていただくために、車両検査の結果や車両グレードを提示しています。JBA以外にも、5~6社は、同じような評価をしています。ただ、各社はそれぞれの基準で査定しており、共通の指標はありません。仮に、この査定方法を標準化することができれば、バイヤーにとっては大きなベネフィットとなります。

検査方法を標準化することで、評価や査定が均一化しますし、評価が標準化できれば、車両金額価値算定も今以上に透明化されるからです。結果として、バイヤーだけでなく、セラーにとっても大きな価値が生まれます。このように、あらゆるステークホルダーにとって価値のあることは、他社を巻き込んで、業界標準を作っていくことだと考えています。

弊社で既に試行し改善しているものがありますので、これをベースにできればと考えていますが、とはいえ、弊社のものを各社にどうしても使わせたいというわけではありません。最適化するためには、他のアイデアも常にオープンであるべきです。目的はあくまでも、お客様のために標準化したいという点なのです。

ちなみに、JBAの検査システムは、検査項目が多く正確な検査&評価をする目的で作られているものです。ベースとなる考え方はどの会社も共通なはずなので、検査項目数を少なくして検査時間の短縮化を可能にするなどのカスタマイズは施せば、ディーラーや下取り業者にもこの取組に参加いただくことが可能だと考えています。

 

また、それと同時に、「BASTK」も、多くのオークション会社とファイナンス会社の間で、同じコンセプトで活用したいですね。ファイナンス系の会社は、エンドユーザーから車両を引き受ける際に車両状態をチェックし、紙の引き受け証を交換しています。それを、オークション会社が引き受けるまで、運送会社など複数の引き渡しポイントがあるのですが、その全てのポイントの管理は、紙面で行われています。

途中で部品が紛失したり、どこかのパーツの状態に変化があっても、オークション会社(弊社JBA)で検査するまではそれらの問題に気づくことができず、もちろん、さかのぼって詳細を確認することも不可能です。

JBAでは、この問題を解消するため、「BASTK」業務をデジタル化しました。これによって、それぞれの段階での車両状態を可視化しトレースすることが可能になりました。ですので、今後なるべく多くのファイナンス会社にも、このシステムを活用いただき、フローや内容が可視化された、受け渡しポイントを増えしていきたいですね。

在庫の状態(エイジング等)に関する情報の可視化や、その情報のセラーへの提供など、JBAが進んでデジタル化していくことで、業界や業界のプレイヤー全体の価値を高め、お客様のベネフィットとなるサービスを提供していくことを今以上に、推進していきたいと考えます。

 

 

Y: ありがとうございました。他社様やファイナンス会社、ディーラーのご担当者などで、こういった考え方に興味がおありの方は、ぜひお気軽に、JBAさんにお問い合わせいただければと思います。

 

 

後記

今回、塩山代表取締役には、今回の話以外にも、色々な貴重なお話をいただきました。

インドネシアの自動車・バイクの二次流通に関わる会社様や関係者の方々にとっても、塩山代表が培われた経験やアイデアは、非常に価値のあるものだと思います。ぜひ、業界全体で、標準モデルを策定するための取り組みを進めていただけたらと思います。

LOGIQUEは、引き続きダイナミックな成長を続けるJBAを、IT・デジタル面で支援してまいります。

Yoshi
Yoshi

https://www.logique.co.id/blog/ja/author/yoshi/

LOGIQUE’s founder and CEO. After working as a business development consultant at a consulting firm, he started a business in Japan, exited, and then moved to Indonesia, where he now manages multiple companies.

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